http://www.data-max.co.jp/2011/08/post_16149.html
宮崎県における安愚楽牧場の実態(後)~進出から破綻まで
2011年8月30日 07:00
<1993年に宮崎に進出>
安愚楽牧場(株)、1981年12月の設立。現在は北海道から九州、沖縄まで国内各地に直営農場38カ所、生産預託農場330カ所を擁し、仔牛の生産から成牛飼育まで一貫した生産肥育体制を持つ、国内大手に位置付けされる黒毛和牛牧場。
93年に宮崎県に進出し、宮崎支店(児湯郡高鍋町大字上江6573-2)を開設、97年には児湯地区(高鍋町、川南町、都農町)、西都市を中心に直営農場を順次開設、また、規模拡大を図るなか、預託農場も増やし、2011年5月末現在では小林市や児湯地区に直営農場38ヵ所のうちの15カ所が宮崎県内(児湯地区12カ所、西都地区1カ所、小林地区2カ所)にある。だが、口蹄疫発症により、児湯地区の12カ所の直営牧場は現在、閉鎖状態にあり、西都の1牧場と、小林の牧場2カ所で約2,000頭を飼育している。また、預託農場は22カ所が聞かれ約4,000頭を飼育している。ほかは、小林市のレジャ-施設「コスモス牧場」を運営する第三セクタ-・北きりしまリゾ-ト牧場に小林市JAこばやしなどとともに出資している。また、子会社が運営するコスモス牧場内にも「レストラン安愚楽北霧島」「ラマイ市場」を出店していたが、11年8月23日で閉館状態とされた。
<殺処分による保証金88億2,330万円受ける>
昨年(10年)発生した口蹄疫により15カ所の直営農場を持ち、児湯地区12カ所の農場が殺処分の対象となった。預託農家の分はわからないが約1万5,000頭が殺処分による埋却処理が行なわれたと聞かれ、殺処分による保証金88億2,330万円を受けた。(算出基準・乳用牛が20~60万円・肥育牛が60万円~90万円程度。豚が約5万5,000円程度)
保証金は家畜の所有者に対して暫定的に支払われ、その後、実際の評価額に足りない分が上乗せされるといったやり口で、全額が支払われた。しかし、これらの保証の対象は家畜の所有者に限られ、委託を受けて牛や豚を肥育して、出荷価格の一部を受け取る預託農家は対象外であった。
当時の預託農家は川南町で12軒(牛4軒・約1,500頭、豚8軒・約6,000頭)、木城町で4軒(牛3軒・約1,700頭、豚1軒・約1,000頭)があった。ただし、一部では見舞金として預託元が預託農家へ金一封を支給するようになっていた。
現代表はカネへの執着が強く、シビアであるとも聞かれていたが、今回の保証金に対しても、各預託農家に25~30万円程度は支払われようだが、当時の預託農家全体でも支払は数百万円程度で済ましたものと推定される。
ある預託農家は、「1頭につき1日120円の預託料がでるが、7月分は支払われていない。また、安愚楽牧場から指定されたエサしか与えられないル-ルがあるため、そのエサも届かず、このままでは牛が餓死してしまう」と、嘆いていた。小林地区の預託業者は、「8月9日に2週間分預託料が送られてきたが、今後はどうなるのか、不安を隠せない状況となっている」など、苦慮している一面が実態として聞かれた。
<オ-ナ-制度利用者は宮崎県内で210人>
今回の当社の倒産は、口蹄疫により再開した畜産業者は53%余り、再開の有無を思考する畜産業者などへ大きなショックを与えるところとなった。
当県におけるオ-ナ-制度を利用した出資者は1,000万円以上が32人内外で、同1,000万円未満が178人内外いると言われている。また、県内在住の出資者の債権総額は10億3,900万円内外が見込まれており、最大の債権額は約6,100万円であると聞かれる。
また、配当金などの支払遅延が生じた7月以降も、元本保証、高配当(48万円を出資すれば、半年後に予定額52万円、予定額を下回った分は同社が負担などの内容)で新たに出資を募っていたようだが、当県内でのその後の被害者は不明である。
当社は否定しているが、口蹄疫発症の証拠隠ぺいや報告を伸ばすなど、宮崎県内での口蹄疫問題から地元を中心に、全国的にも大きく信用失墜をしていたのは否めず、また、従来から資金的には内部留保も乏しく余裕はなかったとも聞かれていた。また、運営はいずれ行き詰るとの風評もあった。
しかし、カネの執着心の強い代表者とも言われ、安愚楽牧場自体シビアな経営であったにもかかわらず、口蹄疫終息から1年余りであっけない幕切れとなった。
(了)
【特別取材班(宮崎)】
宮崎県における安愚楽牧場の実態(後)~進出から破綻まで
2011年8月30日 07:00
<1993年に宮崎に進出>
安愚楽牧場(株)、1981年12月の設立。現在は北海道から九州、沖縄まで国内各地に直営農場38カ所、生産預託農場330カ所を擁し、仔牛の生産から成牛飼育まで一貫した生産肥育体制を持つ、国内大手に位置付けされる黒毛和牛牧場。
93年に宮崎県に進出し、宮崎支店(児湯郡高鍋町大字上江6573-2)を開設、97年には児湯地区(高鍋町、川南町、都農町)、西都市を中心に直営農場を順次開設、また、規模拡大を図るなか、預託農場も増やし、2011年5月末現在では小林市や児湯地区に直営農場38ヵ所のうちの15カ所が宮崎県内(児湯地区12カ所、西都地区1カ所、小林地区2カ所)にある。だが、口蹄疫発症により、児湯地区の12カ所の直営牧場は現在、閉鎖状態にあり、西都の1牧場と、小林の牧場2カ所で約2,000頭を飼育している。また、預託農場は22カ所が聞かれ約4,000頭を飼育している。ほかは、小林市のレジャ-施設「コスモス牧場」を運営する第三セクタ-・北きりしまリゾ-ト牧場に小林市JAこばやしなどとともに出資している。また、子会社が運営するコスモス牧場内にも「レストラン安愚楽北霧島」「ラマイ市場」を出店していたが、11年8月23日で閉館状態とされた。
<殺処分による保証金88億2,330万円受ける>
昨年(10年)発生した口蹄疫により15カ所の直営農場を持ち、児湯地区12カ所の農場が殺処分の対象となった。預託農家の分はわからないが約1万5,000頭が殺処分による埋却処理が行なわれたと聞かれ、殺処分による保証金88億2,330万円を受けた。(算出基準・乳用牛が20~60万円・肥育牛が60万円~90万円程度。豚が約5万5,000円程度)
保証金は家畜の所有者に対して暫定的に支払われ、その後、実際の評価額に足りない分が上乗せされるといったやり口で、全額が支払われた。しかし、これらの保証の対象は家畜の所有者に限られ、委託を受けて牛や豚を肥育して、出荷価格の一部を受け取る預託農家は対象外であった。
当時の預託農家は川南町で12軒(牛4軒・約1,500頭、豚8軒・約6,000頭)、木城町で4軒(牛3軒・約1,700頭、豚1軒・約1,000頭)があった。ただし、一部では見舞金として預託元が預託農家へ金一封を支給するようになっていた。
現代表はカネへの執着が強く、シビアであるとも聞かれていたが、今回の保証金に対しても、各預託農家に25~30万円程度は支払われようだが、当時の預託農家全体でも支払は数百万円程度で済ましたものと推定される。
ある預託農家は、「1頭につき1日120円の預託料がでるが、7月分は支払われていない。また、安愚楽牧場から指定されたエサしか与えられないル-ルがあるため、そのエサも届かず、このままでは牛が餓死してしまう」と、嘆いていた。小林地区の預託業者は、「8月9日に2週間分預託料が送られてきたが、今後はどうなるのか、不安を隠せない状況となっている」など、苦慮している一面が実態として聞かれた。
<オ-ナ-制度利用者は宮崎県内で210人>
今回の当社の倒産は、口蹄疫により再開した畜産業者は53%余り、再開の有無を思考する畜産業者などへ大きなショックを与えるところとなった。
当県におけるオ-ナ-制度を利用した出資者は1,000万円以上が32人内外で、同1,000万円未満が178人内外いると言われている。また、県内在住の出資者の債権総額は10億3,900万円内外が見込まれており、最大の債権額は約6,100万円であると聞かれる。
また、配当金などの支払遅延が生じた7月以降も、元本保証、高配当(48万円を出資すれば、半年後に予定額52万円、予定額を下回った分は同社が負担などの内容)で新たに出資を募っていたようだが、当県内でのその後の被害者は不明である。
当社は否定しているが、口蹄疫発症の証拠隠ぺいや報告を伸ばすなど、宮崎県内での口蹄疫問題から地元を中心に、全国的にも大きく信用失墜をしていたのは否めず、また、従来から資金的には内部留保も乏しく余裕はなかったとも聞かれていた。また、運営はいずれ行き詰るとの風評もあった。
しかし、カネの執着心の強い代表者とも言われ、安愚楽牧場自体シビアな経営であったにもかかわらず、口蹄疫終息から1年余りであっけない幕切れとなった。
(了)
【特別取材班(宮崎)】
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