2011/08/22

【ドキュメンタリー】安愚楽牧場倒産まで

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【ドキュメンタリー】安愚楽牧場倒産まで
更新日:2011年08月22日

今年最大となる約4330億円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請した和牛預託商法の「安愚楽牧場」。多くのオーナー出資者が参加して神戸、東京でそれぞれ債権者説明会が行われた。牧場側は今後も全力で弁済することを約束したが、怒りを露わにしているオーナーは多い。ゆかしメディアは出席した複数のオーナーへの取材を基に、倒産までのドキュメンタリーをまとめた。

6月についに未払い
雨が降りしきる中、東京・両国国技館で行われた「安愚楽牧場」の債権者説明会。オーナー出資者約7万人というだけあって、昼と夜の2回に分けて行われ、それぞれ2、3000人が参加したようだ。1回約3時間の説明会はときおり、オーナーが声を荒げる場面もあったようだ。
まず冒頭に、三ヶ尻久美子社長が涙ながらに頭を深々と下げて「申し訳ございません」と、謝罪したという。そして倒産の理由を2点挙げ、一つは昨年の宮崎県で起きた口蹄疫、二つ目は今年3月に起きた東京電力福島第一原発事故による解約が急増したことだという。
「今年3月には口蹄疫の保険金が数十億円入ったと言っていた」(60代男性)という証言もあったが、かなり苦しんだようで、その程度ではどうすることもできなかったようだ。そのくらい解約のスピードはすさまじかったと見える。
そして、ついに6月には未払いを起こしてしまったのだという。そこから、事態は風雲急を告げた。

7月末の配当が払えない?
出席者によると、安愚楽牧場は6月末の未払いが発生し、何とか60億円を用立てなければならなくなったという。その間もメディアへの広告出稿は止めずに、どんどん新規募集を行い、新たな資金を集めて乗り切ろうとしていたのだろうか。7月のスケジュールは次のようになる。
7月15日 約40億円の配当支払い
7月24日 安愚楽牧場が役員会を開催
7月26日 弁護士に事態を説明し相談
7月28日 弁護士から民事再生法の適用申請を勧められる
7月29日 民事再生法の適用を申請することを決定
8月1日 東京商工リサーチが「債務調査中」と発表
8月10日 東京商工リサーチが「倒産」を発表
8月17日 債権者説明会を開催(神戸市)
8月19日 債権者説明会を開催(東京都)
7月15日に配当の支払いは何とか完了したものの、問題は7月末にもう一度支払いがあることだった。その額は約60億円だったといい、26日の役員会ではあらゆる方法を模索したという。また、8月以降もメドが立たなかったことで、残る道は一つしかなかった。
牧場側にはもういっさいの余力は残っておらず、最悪のケースを覚悟して顧問弁護士に相談するより他なかった。7月の締め日であった7月29日、1979年に和牛1頭からスタートした安愚楽牧場を倒産させる道を選んだ。

安愚楽牧場のビジネスモデル
和牛の募集価格は、牛(価格の60%ほど)プラス飼料代などの諸経費が入って数倍~10倍に設定しているのだという。あまりにも高いように思うが、説明では和牛は子供を産んでいく上に売却できるために、配当金を出していくのは問題ないという。
だが、牧場側は、最近のデフレ傾向は和牛の価格でも起きていたと説明しており、高値で売却することは厳しかったものだと思われる。こうしたことも資金繰りが苦しくなっていった要因ではないかと思われる。
安愚楽牧場が預かっている和牛は約14万頭で、そのうち出資オーナー分は約10万頭。説明会では、和牛の育成には日々のランニングコストがかかるために、弁済資金を作るために早期の売却を行いたいという意向を伝え、出資オーナーたちに同意を求められたそうだ。
「同意するしかしょうがない。そうじゃなきゃ、現物引き取りになってしまうもの。でも50%以上は戻るようなことを言っていた。今までの配当と合わせたら、そんなに損はしていないから、勉強だと思わないと…」(60代男性、出資金300万円)
しかし、こんな物わかりのいい出資オーナーばかりではない。

俺は1億2000万円出資したんだぞ
説明会の場所は両国国技館。普段は大相撲の会場だけに、マス席に座ることになったオーナーも。「座り心地悪いわよね。もうちょっと何とかならないのと思ったわ」(夫と2人で来た50代女性)。大雨の中わざわざ遠方から東京まで出てきた人もいた。九州から来たという男性は手厳しかった。それもそのはずで出資金は1億円以上だったからだ。
その男性は「社長、あなたは問題がないなどとこれまで言ってきたが、われわれを騙してきたのか」などと追及したのだという。三ヶ尻社長はうつむいて、答えることができなくなってしまったそうだ。
他にも「東電を刑事告訴すべきだ」「本当に口蹄疫と原発事故が原因なのか? 実は自転車操業だったんだろう」などという厳しい意見が続出したという。
また「3月以降は系列ホテルも95%が稼働していなかった」(50代男性)などという証言もあり、グループの売上は実質的にないに等しい状態だったことがうかがえる。
また、出資して10年以上という60歳代の男性は7、8年前から徐々にポジションを減らしていったのだという。その理由を「今時、こんな高金利のモノないでしょ。宣伝も増やしていたし、危ないなと思っていましたから」と語った。賢明な選択であり、ダメージを最小限に抑えた。そして、男性は達観したような表情で最後にこう言った。
「みんな自己責任ということを忘れているよね」。
裁判所と清算方法について協議したり、東電の賠償支援機構にも要請するというが、やはり、みな忘れてはいけないことを忘れている。

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