2011/08/30

牛飼える「ありがたい」

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牛飼える「ありがたい」
2011年08月26日

口蹄疫(こう・てい・えき)の終息宣言から1年を控えた25日の昼前、高鍋町持田の肥育牛農家、金崎均さん(54)は牛舎に向かった。朝夕の餌やり以外も、合間を見て、餌の食べ具合など牛の体調を確認するためだ。
「牛の体調が悪いかどうか1日でも1時間でも早く見つけないと」。そんな話をしながら見て回る金崎さんを見つけ、寄ってくる牛がいた。「あいつはなれなれしいから寄ってくるんですよ」。金崎さんは手を伸ばして、柵から顔を出した牛をなでた。
金崎さんは口蹄疫発生により、昨年6月に牛計118頭を殺処分。同11月から飼育を再開した。毎月市場に行って牛を買いそろえ、現在は57頭にまで増えた。
最初に買った牛は筋肉が付いて大きくなり、サシ(脂肪)を入れる時期という。成長具合に応じて、餌となるトウモロコシや麦の分量を変えていく。20カ月の肥育期間を経た後の来年7月が、最初の牛の出荷予定だ。
順調に進んでいるように見えるが、心配事もある。枝肉価格の低迷だ。
東京電力福島第一原発事故による放射性セシウム汚染問題で牛肉の消費が低迷し、価格が下落。子牛を買い、大きく育てて出荷する肥育牛農家に大きな影響を及ぼしている。「和牛オーナー制度」を運営する安愚楽(あ・ぐ・ら)牧場(本社・栃木県)が民事再生法の適用を申請し、事実上倒産したことも気がかりだ。県内の肥育牛農家の代表たちは今月19日、「このままでは肥育牛経営の継続は困難な状況」として、河野俊嗣知事に対策を要請した。
金崎さんは「枝肉価格が戻ってくれないと、新しい子牛もよう買わん。ほかにも潰れる農家が出てくるのではないか」と話す。
昨年の口蹄疫では感染拡大がなかなか収まらず、「出口の見えないトンネル」状態だった。今年になって、鳥インフルエンザの発生、新燃岳の噴火、そして東日本大震災があった。
金崎さんは「口蹄疫はあったけど、自分には命もあるし牛小屋もある。牛も飼える。好きなことができてありがたい」としみじみ語った。(石田一光)

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