2011/09/09

帝国データバンク、8月の全国企業倒産集計を発表

http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=290973&lindID=5
帝国データバンク、8月の全国企業倒産集計を発表
2011年8月報 

倒産件数は969件、2ヵ月連続の前年同月比増加
負債総額は7975億8100万円、今年最大を記録

倒産件数:969件
前年同月比:+0.5%
前年同月:964件
前月比:+0.4%
前月:965件

負債総額:7975億8100万円 
前年同月比:+371.3% 
前年同月:1692億3300万円 
前月比:+293.1% 
前月:2028億8500万円 

■件数
ポイント 2ヵ月連続の前年同月比増加
倒産件数は969件(前月965件、前年同月964件)で、前月比は0.4%、前年同月比も0.5%の増加となり、2ヵ月連続で前年同月を上回った。倒産件数は増減を繰り返しながらも、緩やかに増加基調にシフトしつつある。
要因・背景
1.各種食料品店やガソリンスタンドなど、小売業(188件)が前年同月比41.4%の大幅増加
2.負債5000万円未満の零細企業の倒産、5ヵ月連続で前年同月を上回る 

■負債総額
ポイント 4ヵ月ぶりの前年同月比増加、今年最大を記録
負債総額は7975億8100万円(前月2028億8500万円、前年同月1692億3300万円)で、前月比は293.1%、前年同月比も371.3%の大幅増加となり、4ヵ月ぶりに前年同月を上回った。負債1000億円以上の大型倒産が2件発生したことにより、負債総額は今年最大を記録した。
要因・背景
1.負債トップは和牛預託オーナー制度運営の(株)安愚楽牧場(栃木県)で4330億8300万円。消費者金融準大手の(株)SFコーポレーション(神奈川県)の1897億円が続く
2.負債1000億円以上の大型倒産が、(株)林原(岡山県、2月)以来6ヵ月ぶりに発生

■業種別
ポイント 小売業が前年同月比41.4%の大幅増加
業種別に見ると、7業種中2業種で前年同月を上回り、なかでも小売業(188件、前年同月比41.4%増)の増加が際立った。一方、建設業(252件、同14.0%減)、製造業(123件、同8.2%減)などの5業種では前年同月を下回った。
要因・背景
1.小売業…飲食料品小売(32件、前年同月比39.1%増)やガソリンスタンド(8件、同300.0%増)で増加が目立つ
2. 建設業…土木工事(45件、前年同月比25.0%減)が大幅減少

■主因別
ポイント 「不況型倒産」の構成比83.6%、27ヵ月連続で80%台の高水準
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は810件(前月825件、前年同月831件)、構成比は83.6%(前月85.5%、前年同月86.2%)となった。前月を1.9ポイント、前年同月を2.6ポイント下回ったものの、27ヵ月連続で80%台となった。
要因・背景
1.「円高関連倒産」は8件で1月(7件)を上回り今年最多、うちデリバティブ関連は4件
2.「返済猶予後倒産」は18件(前年同月比63.6%増)発生、うち円滑化法利用ありは16件
倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■規模別
ポイント 負債1000億円以上の大型倒産が6ヵ月ぶりに発生
負債額別に見ると、負債1000億円以上の大型倒産が2件発生、2月の(株)林原以来6ヵ月ぶりの発生となった。一方、負債5000万円未満の倒産は496件、構成比は51.2%で、3ヵ月連続で50%超を占めた。資本金別に見ると、個人経営と資本金1000万円未満が539件発生、構成比は55.6%を占めた。中小企業基本法に基づく中小企業・小規模企業を見ると、中小企業は968件(構成比99.9%)、小規模企業は825件(同85.1%)となった。
要因・背景
1.負債5000万円未満の倒産、小売業(125件、前年同月比43.7%増)で大幅増加
2.負債100億円以上の倒産は、2009年5月以降28ヵ月連続で1ケタにとどまる

■地域別
ポイント 関東を中心に9地域中5地域で前年同月比増加
地域別に見ると、9地域中5地域で前年同月を上回った。なかでも北海道(31件、前年同月比14.8%増)、関東(385件、同6.4%増)の増加が目立った。一方、北陸(26件、同16.1%減)、近畿(229件、同10.5%減)などの4地域は前年同月を下回った。
要因・背景
1.関東は、埼玉では零細規模を中心とした建設業(21件、前年同月比133.3%増)、東京では飲食料品などの小売業(36件、同176.9%増)の増加が目立つ
2.東北の被災3県(19件、前年同月比9.5%減)は、3ヵ月連続で前年同月を下回る 

■上場企業倒産
8月は、3ヵ月連続で上場企業の倒産は発生しなかった。
2011年の上場企業の倒産は5月にジャスダック上場の(株)セイクレストが倒産して以来3ヵ月連続で発生せず、沈静化が続いている。

■大型倒産
8月の負債額トップは、和牛預託オーナー制度で知られる(株)安愚楽牧場(栃木県、民事再生法)の4330億8300万円で、今年最大の倒産となった。(株)SFコーポレーション(旧・三和ファイナンス(株)、神奈川県、破産、負債1897億円)と合わせ、2社だけで8月の負債総額合計の78.1%を占めた。 負債100億円以上の大型倒産は、2009年5月以降28ヵ月連続で1ケタにとどまった。 

■景気動向指数(景気DI)
景気DIは35.2、前月比0.3ポイント減と4ヵ月ぶりの悪化
2011年8月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.3ポイント減の35.2となり、4ヵ月ぶりに悪化した。 震災から5ヵ月が経過し、国内の生産設備やサプライチェーンの復旧は進んだものの、今夏の節電が企業活動に悪影響を与えたほか、円が一時、1ドル=75円93銭と戦後最高値を更新するなど輸出環境が厳しさを増したことで、震災後の生産回復、増産の動きが鈍化し、「製造」は4ヵ月ぶりに悪化した。
震災後の回復局面に早くも変調
しかし、復興需要の増加により「東北」は改善基調を続けており、全国10地域中で過去最高の第2位に上昇した。47都道府県別でみても「宮城」が2ヵ月ぶりに第1位となったほか、「福島」(第4位)、「岩手」(第5位)も過去最高の順位となった。 また、月前半の猛暑により節電や省エネ対策製品の需要増が続いたほか、円高による輸入品価格低下などのメリットもみられた。ただ、内需の底上げにはこれらの効果は限定的で、月後半の気温低下や豪雨なども個人消費の回復を妨げる要因となったことで、「小売」の改善幅は前月に比べて大きく縮小した。 国内景気は輸出環境の悪化と内需の伸び悩みにより、震災後の回復局面に早くも変調が表れはじめている。

今後の見通し
■倒産件数は2ヵ月連続の増加、負債総額は今年最大を記録
2011年8月の企業倒産は969件発生し、前年同月の964件を5件上回り、2ヵ月連続の前年同月比増加となった。震災、円高、原料高などの影響で先行き不透明感が増すなか、業種別では小売、サービスの2業種が、地域別では関東の増加がそれぞれ全体の件数を押し上げた。震災後、倒産件数は増減を繰り返しながらも、緩やかに増加基調にシフトしつつある。 負債総額は7975億8100万円に急増し、今年最大を記録した。8月は今年1番の大型倒産となった安愚楽牧場(栃木県)が民事再生法を申請。同社の負債4330億8300万円は、戦後39番目の規模となった。また、消費者金融準大手だったSFコーポレーション(旧・三和ファイナンス、神奈川県)も、過払い金返還債務を中心に負債1897億円で破産手続き開始決定を受けた。負債1000億円以上の倒産は、2月に会社更生法を申請した林原(岡山県、負債1322億7100万円)以来6ヵ月ぶり。この2社だけで8月の負債総額全体の78.1%を占めた。
■「円高関連倒産」が今年最多
8月19日、円相場は一時1ドル=75円93銭に上昇し、東日本大震災直後につけた戦後最高値を更新した。震災や原発事故、今回の急激な円高ドル安を受けて企業の海外シフトの動きが一層進めば、中小下請けを中心に輸出企業のダメージは計り知れない。帝国データバンク調べによると、国内の輸出企業3万3083社のうち、年商10億円未満の中小企業が全体の約6割にあたる1万9494社。このうち業績が判明した企業の約3割が直近決算で赤字を計上しており、もともと厳しい中小企業の経営に今回の円高がさらなる追い討ちをかける。すでに円高の影響で行き詰まる企業も相次いでおり、8月の「円高関連倒産」は8件と今年最多。2011年1~8月の合計は34件(前年同期28件)、集計開始の2008年以降で最多だった2010年を上回るペースで推移している。現状半数(17件)を占める「デリバティブ損失」とともに、今後は円高に起因する「受注減少」や「輸出不振」による関連倒産が徐々に増えてくる可能性がある。
■「金融円滑化法利用後倒産」の増加続く
9月11日、東日本大震災の発生から半年を迎える。被災3県では、がれき撤去にようやくメドが立ち、被災者が身を寄せた避難所も相次いで閉鎖されている。地元のスーパーや百貨店では消費が上向くなど、復旧・復興に向けて着実に前に進み始めてきた。しかし、一部の建設、流通業者を除けば、復興需要は未だ本格化していない。中小企業支援のため、各県に設立予定の「産業復興機構」による金融機関からの債権買い取りの動きも、遅々として進んでいない。この間、震災による直接、間接の影響を受けた「東日本大震災関連倒産」は、ピーク時に比べやや落ち着いてきたものの、依然として阪神大震災時を上回る発生ペースが続いている。現時点では「被災地以外の間接被害型」が倒産の中心で、とくに建設業の倒産が目立つ。被災地の倒産は各種特例措置で抑制されているものの、被災地以外の倒産が全体を押し上げる形で関連倒産は引き続き高水準で推移する見通しである。円高、震災の影響とともに、金融円滑化法利用後企業の動向も注目される。同法を活用するなどして返済猶予を受けた後に倒産した企業は8月に18件判明。2011年1~8月の合計は149件に達し、すでに前年の年間合計(112件)を大きく上回っている。同法を利用した企業は少なくとも30万社前後と推定され、このうち数%でも倒産手続き入りすれば、全体の倒産件数が大きく上積みされるのは確実だ。震災直後の混乱の中でリスケ要請に応じてから半年が過ぎ、金融機関は企業からの支援要請に再び応じるかどうかの決断を、この秋以降迫られる。このために倒産動向の転換点とみられる10月から年末にかけて一段と増加基調が強まる可能性は十分にある。

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※ 関連資料参照

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    件数・負債総額の推移
    全国企業倒産集計 2011年8月報

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