2011/12/06

安愚楽牧場預託農家、餌代止まり牛売れず…地獄

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111205-OYT1T00332.htm
安愚楽牧場預託農家、餌代止まり牛売れず…地獄
(2011年12月5日17時37分  読売新聞)

和牛オーナー制度が行き詰まり破産手続きへ移行中の「安愚楽牧場」(栃木県)の問題で、同牧場が北海道道内の農家に対し支払ってきた預託料が、4日分までの支払いを最後に打ち切られた。
牧場側は、預託農家に対し、預けている牛と未払い債権の相殺を求めているが、5日以降、預託農家に餌代などは入らない。生き物の牛を抱えて餌を与え続けなければならない農家は、後にも先にも進めない状況にある。
「安愚楽は我々の救世主だった。牛舎があれば収入になるから、離農した農家もぶら下がった」。十勝地方で安愚楽牧場の黒毛和牛約100頭を預かる60歳代の男性は、出会いをそう振り返った。
20代でサラリーマンをやめて父親の跡を継ぎ、乳牛のホルスタインの雄を肉牛として売る事業に乗り出した。600頭以上育て、バブル期には年間2億5000万円を売り上げたが、牛肉の輸入自由化で低価格牛の相場が暴落、1億数千万円の借金を作った。
牛をすべて売り、20ヘクタールの土地を処分したが、6000万円の借金が残った。途方に暮れていたころに、農協から舞い込んだのが安愚楽牧場の預託の話だった。「牛舎は空。餌代や光熱給水費も安愚楽が面倒をみてくれる」。家族を代表にして1999年頃に安愚楽と契約した。
預託料は牛1頭当たり1日480円で、100頭いれば1日4万8000円の収入になった。しかし、今年7月から支払いが止まり、安愚楽牧場の経営破綻が表面化。支払いはその後再開したが、未払いの約280万円は今も回収できていない。「支払いが止まったら、借金が再び増えてしまう」。男性は肩を落とす。

農林水産省によると、今年8月現在の安愚楽牧場の牛の飼育頭数は14万5100頭。うち北海道では、直営牧場8か所が3万8200頭を、預託農家136戸が2万7200頭をそれぞれ飼育していた。預託農家は全国で346戸あり、その4割が道内にある計算だ。
放射性セシウムの牛肉汚染問題による消費の落ち込みなどを受け、安愚楽牧場は清算方針を固め、当初は事業を継続する民事再生手続きを選択。ところが想定以上に資金繰りが悪化しており、11月8日には東京地裁が同手続きの廃止を決定、今月上旬にも破産開始決定が行われる見込みだ。
安愚楽牧場側は11月中旬、預託農家が未払いの預託料などの債権を放棄する代わりに、飼育中の牛の譲渡を受ける契約を結ぶよう弁護士を通じて求めてきた。しかし、契約の有無にかかわらず、今月5日以降の支払いは打ち切られる予定で、餌代の負担が続く農家は、牛の処分を急ぐか、収入源を探すかを求められる。

150頭の牛を抱える足寄町の農家、中野優さん(56)。牛を手放そうと家畜商に相談したが、繁殖用に10年近く使った高齢の牛ということもあり、「1頭2万円がやっと」と言われた。「預託農家が一斉に牛を手放したら市場も大混乱するだろう」と思案する。
安愚楽牧場の支払いが止まると、中野さんが負担する餌代は月160万円に上り、未払いの預託料も約400万円ある。牛だけでも処分しないと、借金は膨れあがる一方だ。
中野さんは「進むも地獄、去るのも地獄」と話す。(中西利成)

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