2011/12/05

「牧場」頓挫 戸惑う住民/豊後大野市

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「牧場」頓挫 戸惑う住民/豊後大野市
2011年11月24日

豊後大野市大野町宮迫に、破綻(は・たん)した安愚楽牧場(本社・栃木県那須町)が牧場を造りかけていた土地があり、すでに市が国や県の補助も得て、そこに至る農道をつくっていた。予定地はどうなるのか。予算を投じた自治体はどうするのか。地元で話題になり、近隣住民から困惑の声が出ている。
宮迫の、ある集落から高台に向かって長さ637メートルの新しい舗装道路が延びる。上がると雑草の生えた土地に行き当たる。広さ5・5ヘクタール。安愚楽が2008年までに購入し、「大野牧場」として畜舎などを建てる予定だった。
市や畜産関係者によると、安愚楽が03年、合併前の大野町に県を介して進出を持ちかけた。進出協定は町とも、05年にできた市とも結んでいないが、県が積極的に仲介し、協議や用地買収が進んだ。
09年に畜舎建設、家畜導入の予定だったが、牛糞(ふん)処理の委託先の協議や排水路の付け替え、土砂搬入などの影響で遅れ、昨年には宮崎県で口蹄疫(こう・てい・えき)が発生し、事業は一時休止となった。その後「2千頭を1500頭に変更して計画を進める」と市や地元に説明があったが、今年8月、民事再生法の適用を申請し、8月末、大分支社長が「事業再開は難しい」と市に伝えてきた。今月上旬には破産手続きに移ることになった。
道路は06~08年に農水省の交付金事業を活用し、地域の農道として整備した。事業費は約1億2千万円。うち55%が国、10%が県の補助金。県は大野牧場を08年度の農業への企業参入の実績に数えている。
周辺は高齢化し、農業後継者もほとんどいない。土地を売った1人は「圃場(ほ・じょう)整備していない畑で、これから耕し手もいない。進出話が出た当初、優先雇用すると聞いて売却を決めた人もいた」と話す。住民の1人は「せっかく道路もできたし、何か別のものでも来て欲しい。でも、変なものが来たら困る」と話す。
予定地は、道路工事の残土を搬入しているため畑に戻せないが、畜舎や水耕栽培のハウスは建てられるという。橋本祐輔市長は「実質的に住民の被害はないとはいえ道路までつくった。跡地の今後は、立地を進めた県とも協議していきたい」と話す。
一方、県畜産振興課の金塚秀夫課長は「基本的には市の問題だが、農業への企業参入の一環として県が関わった経緯はある。土地が管財人に引き継がれているのかなどを見ながら、対応を考えたい」と話す。
10月半ば、畜産農家の求めに応じ、市の職員が大野牧場の進出について、牛の増頭を目指す県の指導のもとで進んだと説明した。畜産農家から「県の方針のためになぜ市もここまでしなければいけなかったのか」「地元畜産への貢献が見えない事業なのになぜ進めたのか」などの声が上がった。(後藤たづ子)

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