2013/01/14

2013年、詐欺師の手口はこれだ! 振り込め詐欺から環境・エネルギー系、ニセ科学まで要注意


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2013年、詐欺師の手口はこれだ! 振り込め詐欺から環境・エネルギー系、ニセ科学まで要注意
2012年 12月27日

 原稿を書こうとしていたら民主党の代表選が放映されており、海江田万里氏が選ばれた。記者会見の質疑で共同通信が安愚楽牧場との関わりを問いただしていたが、何とも歯切れの悪い返答で、自分も投資していたから、終わったことだから、20年前だからなど言い訳にならぬ言い訳をしていた。

安愚楽牧場問題は何も終わっていない
 すでに明らかになっていることだが、「全国安愚楽牧場被害対策弁護団は、2月中にも損害賠償の訴訟を起こすことを、裁判所の手続を通じて海江田氏に通告済み」(紀藤正樹弁護士のTwitterより)なのだ。このような状況にある人間を最大野党が党首に選ぶとは、何とも呆れた状況である。

 戦後最大の消費者被害である安愚楽牧場問題は何も終わっていない。2013年、いよいよ詐欺事件として動き出すし、警察の捜査も予定されている。広告塔にも前述したように損害賠償請求がなされるのだ(本来ならば、もっと早くやってもよかったが、総選挙に対する気遣いなのだ。それすら推し量れないから、代表選に立候補するのだろう)。

 さて、2012年は振り込め系詐欺が猛威をふるった年であった。特に劇場型は完成度を高めていき、巨額の被害を全国にもたらしている。社債や抵当証券など様々な有価証券や、土地の権利などを餌に「購入すれば倍額で引き取る」といった騙しを行った。数千万円単位で被害を受けた人も多数出た。

世情に合わせて増えるトラブル系の詐欺

 また、いわゆるオレオレ詐欺(トラブル系振り込め詐欺)も増加し、振り込みではなく手渡しという新しいスタイルで被害を生み出した。金融機関対策として「主人の入院費」「家のリフォーム代」など言い訳まで指導する徹底ぶりで、窓口で注意されたにも関わらず4000万円も騙されてしまった被害者が出ているほどだ。

 この傾向はおそらく2013年も続くだろうと思われる。トラブル系は世情に合わせるところがあるため、たとえば強制わいせつで逮捕される人が増えれば「痴漢の示談金」といった嘘がまた増えることだろう(実際、NHKやJRなど有名団体の職員や企業の社員が逮捕されている)。

 個人情報保護法も名ばかりで、個人情報は漏れっぱなしであり、「名簿屋」は平気で商売をしているため、ピンポイントでの騙しが増えており、これも続くだろう。医者だと分かっていれば「医療ミス」を仕掛けることになるし、教育者であれば「教え子を怪我させた」「妊娠させた」などになる。

 とにもかくにもトラブルを名乗る振り込め詐欺に関しては、本人と直接連絡を取るしかない。2013年に被害を増加させないためにも、これを徹底して啓蒙してほしい。「電話番号が変わった」という連絡が入ったら、必ず前の電話番号にかける、そして、本人ととにかく会う、これだけで被害は防げるのである。

パンフレットと電話には要注意

 問題は劇場型のほうで、こちらは巧妙さが増している。騙す側も元商品取引会社や元証券会社、元電話セールス会社の社員など、口の達者な人間もいるため、営業トークが板についていることが多い。また、売り込みパンフレットが送り付けられた後で、消費者センターなどを名乗り「詐欺が増えている」と伝えた上で、相手にパンフレットの社名を言わせて「そこは問題ありません」と保証するような悪質手口が当たり前になっている。

 おそらく、そして、残念ながら被害額という点では2013年もこの「振り込め系詐欺」が圧倒的なものになるだろう。それだけに、うまい名称を警察庁には考えて欲しいものだ。ほとんどが手渡しになっていることや、トラブル系に加えて劇場型が増えていることもある。いかに、犯罪形式を理解させるかが重要になる。

 こうした場合、大切なのは話を簡略化することだ。個別具象的にすればするほど、話が難しくなる上に、「ここが違うから大丈夫」といった抜け穴が増えてしまう。

 「パンフレットを送ってきて、電話があったら、それが誰であろうと詐欺です」ぐらいでちょうどいいのである。

 次に、前回ここで伝えたステルスマーケティング。芸能人利用はしばらくは控え目になるだろうが、より巧妙になると思われる。いかに宣伝臭さをなくすか、そして、トラブルにならないようにするか、詐欺師たちは懸命に考えていることだろう。ペニーオークションでやらなくなっても、ダイエットや健康などで同じことが行われる。これに加えて、ネット上の有名人、いわゆるパワーブロガーを利用する可能性もある。それも本物だけではなく、作り出されたニセパワーブロガーという手法もある。

 つまり、ステルスマーケティングをやるために、まずは、有名ブログを作り出すためのステルスマーケティングをやるという、二重構造だ。

「広告塔」への損害賠償は認められるか

 Twitterなど様々なSNSを利用して、「ネット有名人」を作り出すことができれば、その人間を利用するだけのこと。露骨にシステムや商品の宣伝をせず、「新しいビジネスの分析」など穏当に見せかけておいて、結果としてはまるように持ちかける手法になるだろう(冒頭で述べた安愚楽がまさにそうで、海江田氏は自身の連載で巧みに参加するような文言を連ねていた)。

 広告塔への損害賠償が認められるかどうか、2013年はこれも要チェック。マルチ商法など悪質商法や詐欺まがい商法を、安直に宣伝すれば、宣伝に加わった人間も弁済義務を負うといった判断が出る可能性もある。

 もうひとつ増えるだろう可能性は、エコロジーや環境、エネルギーに関わる詐欺だ。自公連立による安倍政権になったわけだが、それでも原発再稼働は簡単にはできないし、原発の新設も容易ではないだろう。

 となれば、再生可能エネルギーがより重要視されることだろう。太陽光や風力などの設置に関わる悪徳商法、詐欺商法に注意が必要だ。安い見積もりをしておきながら、いざ設置したら「おたくの屋根では特殊な工具が必要だった」「修繕が必要だったのでやっておいた」など追加料金を請求したり、発電量がでたらめだったりなど、リフォーム詐欺同様の手口に注意しなくてはいけない。

ニセ科学の横行を許してはいけない

 ひとつ安倍政権になって気になるのは、安倍総理がオカルティックな、つまり非科学的な「水からの伝言」などに肯定的と思われるところだ(とくに奥様が)。

 詐欺は基本的にオカルトと親和性がある。ニセ科学も詐欺を支えている。ホメオパシーやデトックス、プラズマクラスターなどの多くは科学的根拠に著しく欠ける(プラズマクラスターについては検証が行われ、通常空間ではほとんど効果がないという実験結果がある。消費者庁からも指摘されている)。

 ニセ科学について肯定的とも思われるような人物が国のトップにいると、それを利用しようとする連中が出てくるのは当然だ。これもある主のステルスマーケティングのようなもので、潜在的に詐欺や悪徳商法を支えることになるのだ。

 環境問題が大切なのは言うまでもないが、だからといって、ニセ科学が横行していいはずもない。放射能除去効果があるといった詐欺商品は現在でも多数出回っているし、なかには大学教授が関わっているケースまである。見分けるのが難しいという側面は確かにある。だが、科学が分からなくても、判別する方法はある。

新しい制度や条例ができた直後は詐欺が多発する

 それは、本当に効果があるのならば、一民間企業や組織「だけ」が喧伝することはないということだ。そこをつつくと彼らは「企業や学会が圧力を加えている」といった言い訳をする。

 ふざけてはいけない。本当に環境や人体にいいものであれば、特許料を払ってでも使うのが当たり前だ。利益追求を当然とする企業ならましてや、だ。「あなただけに」の甘言に乗ってはいけない。

 2013年、本来ならば新政権になり山積する経済問題や外交問題、エネルギー問題の解決が望まれる年だ。少なくとも、詐欺師たちが「変化」を喜ぶような年にだけはしたくない。

 新しい制度や条例(法律)ができた直後は特に詐欺が多発する。そういう意味でも国や行政の動きには(賛否は別として)敏感になっておく必要があるだろう。

夏原武(なつはらたけし)

作家
1959年生まれ。雑誌編集者を経てフリーランスに。著書に「サギの手口―最新裏仕事人列伝」(データハウス) 「現代ヤクザのシノギ方」(宝島社)「バブル」(同・共著)など多数。漫画原作として「新クロサギ 13」(週刊ビッグコミックスピリッツ)「新・逃亡弁護士 成田誠 1 」(月刊 ビッグコミックスピリッツ)などを連載中。

近著に「震災ビジネスの闇」(宝島SUGOI文庫)、「反社会的勢力」(洋泉社新書y)。

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